理論・創造経済国際地域経済地域活性化公共政策地域共生都市・地域情報
     
 
創造都市とは
創造都市研究科とは
創造都市研究科重点研究「創造都市を創造する」とは
 
創造都市キタ/扇町創造村
「CEUR : 創造経済社会と都市・地域再生」
大阪市立大学大学院 創造都市研究科
大阪市立大学 創造都市研究科 3セクター協働の地域活性化プロジェクト
 
 
創造都市研究科重点研究「創造都市を創造する」とは
【研究プログラムの目的】
21世紀経済社会の潮流である「創造経済」の解明と、その社会実験的応用としての「都市地域再生」の研究
 Florida[2002,2004]、Howkins[2007]、UNCTAD(国連貿易開発会議)[2008]などにより、21世紀型の経済社会としての「創造経済」の到来が論じられている。「創造経済」は創造都市の経済的・産業的基盤であり、労働のあり方や就業構造、都市構造などを規定する。この研究によって、本研究科のこれまでの重点研究であった「創造都市」の研究をさらに深化させる。
本研究プログラムでは、【1】「創造経済」の研究に本格的に着手し、【2】その応用としての地域活性化プロセス(社会実験的研究を含む)を検討することを目的とする。既存の経済社会モデルと創造都市・創造経済における3つの創造性を統合した「創造経済」の構築に向けて、それぞれの状況に対応した「都市地域再生モデル」を類型化し政策基盤となる条件の研究を目標とする。

【研究プログラムの特色】
「創造経済と都市地域再生」への6つのアプローチとその特徴
 「理論・創造経済」「国際地域経済」「地域活性化」「公共政策」「地域共生」「都市・地域情報」の6つの側面から検討する。その研究は以下のような特色をもつ。
(1)「創造経済」の理論的検討と国際的研究: 1.アート型創造産業、2.サイエンス型創造産業、3.技術・経済的創造産業(既存産業の創造性向上)の3つの次元から創造経済の理論的研究を進めるとともに、創造経済というコンセプトで都市地域再生を比較検討する。そのため、研究ネットワークの形成や学術シンポジムなどをおこなう(理論・創造経済班/国際地域経済班)。
(2)社会実験的革新性の継承:創造都市研究科は、これまで『創造都市を創造する』という重点研究を行い、従来の文献研究型や調査型の社会研究と異なり、社会人大学院としての特性を生かした、社会実験参画型などの新しい研究方法を提起してきた。こうした社会実験的な革新性を継承し、各地の地域活性化の調査・研究と同時に地元である大阪市(北区)の地域づくりに貢献する(理論・創造経済班/地域活性化班)。
(3)社会的企業・社会的ベンチャー・NPOなどの多様な「第三者セクター」の社会実験的参加型研究を通じた都市地域再生への貢献:生産性や効率性だけには基づかない新しい経済的活動のモデルとして創造経済の発展の独自性を考究する。行政・民間・市民部門の社会人が学ぶ特徴を活かし、創造経済と都市地域再生の研究にあたって、21世紀の地域社会で中心となる社会的企業・社会的ベンチャー・NPOなどの多様な事業活動組織に着目し、その活動の活発化を検討する(理論・創造経済班/地域活性化班/公共政策班/地域共生班)。
(4)創造経済の全体概念と事例のポジティブな効果およびネガティブな効果を解明し、政策的課題を検討:創造経済は新しい経済発展のモデルとなりうるものであるが、(3)で示したとおり20世紀型のように効率性や成長のみを追求するものではない。経済活動への参加に関して不利な状況に置かれた人々の参画を促し、同時に地域発展の不均等性・社会格差の増大の効果を緩和するための公共政策と地域共生社会の創造の可能性を検討する(公共政策班/地域共生班)。
(5)都市・地域情報システムを活用した「創造経済と都市地域再生」の構築と社会実験の推進:近年発展の著しいGISを活かした新ビジネス・地域活性化の研究との連携や、創造経済と都市地域再生の社会実験へのGISの応用(具体的には、地域空間情報システムを活用した地域コミュニティの促進実験など)(都市・地域情報班)。
(6)若手・女性研究者・地域リーダーの育成:本研究は、現場的「知」の専門家である社会人学生の参加と協力を得て行なわれる。これは、創造都市・創造経済に関する若手研究者や女性研究者を養成する貴重な機会であるとともに、地域で活躍するリーダーの養成機会でもある(全体)

【諸概念の関係性】と研究アプローチ
 創造経済は創造都市の基本的メカニズムである。創造経済が創造的な経済社会環境をつくり、そこで創造的なプレイヤーが創造性(クリエイティビティ)を発揮し、創造都市が形成され、都市・地域再生がおこなわれる。


  「理論・創造経済」「国際地域経済」「地域活性化」「公共政策」「地域共生」「都市・地域情報」の6つの面から研究を進める。同時に、創造都市と創造経済を研究するとともに、そのプロモーターとなる若手・女性研究者・リーダーを育成する。
(1)【理論・創造経済】 1)アート型創造産業、2)サイエンス型創造産業、3)技術・経済的創造性の3つの次元から創造経済の理論的研究を進める。
(2)【国際的地域経済】 創造経済と都市地域再生に関する国際的研究や学術シンポジムを通じたネットワークの形成。
(3)【地域活性化】 社会実験的研究の継承と応用。各地の地域活性化の研究と地元である大阪市の地域づくりに貢献。
(4)【公共政策】 創造経済における社会的ベンチャー・NPOなどの多様なセクターを活用する公共政策の検討。
(5)【地域共生】 地域共生社会の創造の可能性やNPO活動の研究。
(6)【都市・地域情報】 近年発展の著しいGISを活かした新ビジネス、地域活性化の研究や、GISの創造経済と都市地域再生の研究への応用。
(7)若手・女性を中心とした研究者・地域リーダーの育成: 現場的「知」の専門家である社会人学生の参加と協力を得て、創造都市及び創造経済に関する若手研究者や女性研究者や地域で活躍するリーダーを養成する。


【研究担当者】
【理論・創造経済】
明石芳彦** 全体総括、創造経済、ソーシャル・アントレプレナーシップ
近勝彦* 都市における情報資本の活用、創造産業
【国際地域経済】
中本悟* 国際的な創造経済と都市地域再生の比較
李捷生 国際的な創造経済と都市地域再生の比較
【地域活性化】
小長谷一之* 都市経済・地域政策、創造的地域活性化、社会実験的連携
立見淳哉 都市産業集積支援、地域政策
【公共政策】
永田潤子* 創造経済時代の公共政策、新しい行政マネジメント
小玉徹 創造経済時代の公共政策、創造都市のための都市住宅政策
【地域共生】
柏木宏* NPOと地域再生
弘田洋二 NPOと地域ケア
古久保さくら NPOとジェンダー
【都市・地域情報】
ベンカティッシュ・ラガワン* 地域活性化と空間情報システム、オープンソース
永田好克 地域情報分析

【研究計画】
[第1年度]
  1. 創造経済概念を多面的視点から学習検討することから始め、当概念に関する理解を共通にする。そのうえで、創造都市概念に即した各グループごとの研究の進め方を明確にしていくための検討を行い、関連する研究環境・研究基盤を整備する。とくに、創造都市概念、創造産業概念との関係、ならびに既存の経済社会概念との関係を明確にする。そうした目的のため、国内外から専門家を招へいし、講義を受けることも予定している。
  2. 各地の創造的な地域活性化事例の研究をおこなうとともに、関西圏を中心に地域事例研究を進める。
  3. 行政機関や市民セクター(NPOなど)と協働で地域再生の社会実験的研究を計画・準備する。シンポジウムを開催する。
  4. 創造経済と都市地域再生に関する情報技術や社会システムのあり方に関するシンポジウムや研究を実施する。
  5. 上記シンポジウムや研究成果などをまとめた冊子を発行する。
[第2年度]
  1. 創造経済概念を基盤としたグループ研究を本格的に開始する。それと同時に、創造経済概念との関係における「ずれ」や「不具合」要因を点検し、グループを超えて、定例的に検討を行っていく。
  2. 創造経済と都市地域再生に関する国際的比較研究を推進する。
  3. 地域活性化の参画型社会研究をさらに発展させるとともに、その事例対象の拡充をはかる。
  4. 行政機関や市民セクター(NPOなど)と協働で都市地域再生の社会実験的研究を実施し、連携してシンポジウムを開催する。とくに第3のセクターといわれる社会的企業、社会的ベンチャー、NPOなどに焦点をあてる。
  5. 創造経済と都市地域再生に関する情報技術や社会システムのあり方に関するシンポジウムや研究を実施する。
  6. 上記シンポジウムや研究成果などをまとめた冊子を発行する。
[第3年度]
  1. 研究科のシンクタンク機能を充実し、創造経済と都市地域再生に関する研究センターとして地位を確立する。
  2. 創造経済と都市地域再生に関する国際的規模の比較研究を推進する。
  3. 創造経済と都市地域再生に関する国内の社会実験的研究を推進する。
  4. シンポジウムや研究成果などをまとめた冊子を発行する。
[第4年度]
  1. 創造経済概念と都市・地域の活性化戦略に関する世界的な呼びかけ会議を開催する。
  2. 創造経済と都市地域再生に関する国際的規模の比較研究を総括する。
  3. 創造経済と都市地域再生に関する国内の社会実験的研究を総括する。
  4. 創造経済概念と都市・地域の活性化戦略に関する国際会議を実施する。
[第5年度]
  1. 創造経済と都市地域再生に関する国内外の経験を総括し、蓄積された知見を公開する。
  2. 創造経済と都市地域再生に関する和文および英文単行本を編集・出版する。
  3. シンポジウムや研究成果などをまとめた冊子を発行する。
  4. 創造経済と都市地域再生のための今後の研究のあり方について総括する。

【研究の重要性】(研究経過)
 重点研究課題「創造都市を創造する」では、既存大都市がさまざまな社会的経済的問題(都市における安全と美観、少数派差別、ホームレス、乱開発、都市中心部の空洞化)を抱えていることに注目した。そのいくつかは都市部からの製造業撤退・産業空洞化に由来した失業、低所得者、人口減少、雇用機会喪失、税収減少などである。こうした問題に対して、芸術・文化、アートを中心とした活動やそれらをコアとする創造産業を柱とする都市形成という政策的発想が「創造都市」概念であった。それは都市膨張指向からの脱却であり、都市・地域の固有の歴史的、文化的資産を活用し、個性的で魅力と活力ある地域づくり、創造性豊かな人材の活躍を求めるものであった。このような視点から、われわれは先般、重点研究課題「創造都市を創造する」への1つの中間報告として『創造の場と都市再生』を出版刊行した。

【研究の重要性】(創造経済概念と都市・地域の活性化)
 都市における創造性の発揮は、経済成果、社会活動、生活の潤いなどで重要である。都市における雇用機会は製造業の縮小や撤退に伴い、変容してきた。また、都市への人口集積と経済活動のサービス化は、知識集約的活動と労働集約的活動に分化し、所得格差を招来している。こうしたなかで、個人のアイデア(創造性、知識、知的財産等)に依存する創作的・知的サービス活動を基本とし、社会的少数派を含む人への雇用機会提供と能力開発の推進を目指す「創造経済」概念が提起されているのである。
 例えば、Howkins[2007]は知的財産権に基づく事業活動を論じている。また、UNCTAD[2008]では、創造性定義を、(1)アート型創造性(伝統的文化と日常的アートからなる文化的創造性) (2)サイエンス型創造性(学術的視点や知的探求心に由来する科学的創造性) (3)技術・経済的創造性(技術的イノベーション、知的サービス、デザイン、ニューメディア関連での実用化開発における経済的創造性) の3つの次元で行っている。そこでは、技術開発やイノベーションという活動を経済的創造性の基本と捉え、基盤的な研究・開発や学術研究と区分している。一方、芸術文化やアート活動全般を重視する創造都市概念を包摂する形で創造経済という概念を提起している。UNCTADの見解は、途上国において、文化芸術活動にかかわるマイノリティの社会的包摂および文化芸術活動を通じた雇用機会の創出、ツーリズムと宿泊・飲食業に関連させる形での自然環境保全活動など、雇用を創出しつつ、属人的能力や人的資源を必要とするサービス活動の質的発展を企図したものである。
  しかし、先進工業国の場合には、都市部から製造業の多くが撤退して久しく、サービス活動中心の産業と企業とが支配的である。そこで、いかなるサービス産業活動が都市経済を支えているか、創造性を発揮するサービス経済活動とは何か、そのための人材養成はどうあるべきか、が重要課題となってきた。
われわれは、創造経済の理論的研究を行う一方で、創造経済という視点から都市・地域の活性化を考究し、政策担当者や事業者などとともにその応用可能性や問題点などをさらに解明したい。そのために、
第1に、創造経済の理論的研究、
第2に、創造産業の研究対象領域を広げ、文化のみならずサイエンス型の産業を含めて研究する。
第3に、都市・地域の活性化のために、民間セクター、行政セクターに加えて、民間市民セクターの役割を重視した3つのセクターによる新しい「公共」政策のあり方を考える。
第4に、創造経済と都市地域の活性化のために、経済・社会文化を相互関係的、総合的に捉える。
本研究プロジェクトは、創造活動の担い手である人や組織を都市・地域の活性化と関連づけて研究することを目的としており、物理的なハード面ではなく創造活動主体を重視する実践的かつ政策指向的である。経済・社会文化を相互関係的、総合的に捉えることは、生活者の生活基盤の充実と生産活動の活性化を両面から検討することを意味する。新しい創造産業では、さまざまなアイデアや発想が不可欠で、それには文化と社会構成員の多様性が必要である。
また、手作り型の仕事は従来の労働集約的仕事の創出ではなく、アートのセンスがある女性や地域に仕事を創出する。都市・地域の活動を創造性の発揮や人的能力開発と結びつけて、高付加価値産業(高付加価値サービス)の推進を含む形で地域活性化を考える。ここで重視なのは創造産業である。それはたとえば、文化遺跡・拠点を訪問する既存のツーリズムを超えて、文化資産を積極的に活用することやリクリエーション・健康増進領域を含む創造的サービスの指向であり、また機能的創造物としての工業デザインや伝統的工芸を超えて、画像やアクセサリーなどである。従来の知識集約型産業は高度技術やデザインを強調したが、創造産業とはそれらにアートや文化の要素と発想を積極的に追加したといえよう。

(参考文献)
John Howkins[2007] The creative economy : how people make money from ideas. Repr. with updated material, Penguin.初版は2001年。
United Nations[2008] Creative Economy Report 2008, The Challenge of Assessing the Creative Economy:towards Information Policy-making, UNCTAD/ DITI/2008/ 2。
The Council on Competitiveness [2005] Innovate America: Thriving in a World of Challenge and Change.
Florida[2004] Cities and the Creative Class, Routledge.

  (※)2000年頃から創造性、知識、知的財産等を重視し、創造産業を取り込む概念として「創造経済」という概念が提案され、注目されている。それは創造性、知識、知的財産等を包摂し創造産業を取り込む概念である。例えば、UNCTADの文書では文化的、科学的、経済的側面から創造性を規定しており、文化的な創造性にも伝統的文化と日常的アートからなる。科学的創造性は学術的視点や知的探求心に由来するものである。経済的創造性は、技術的イノベーション、知的サービス、デザイン、ニューメディア関連など幅広いが、実用化に向けた開発部分を対象とする。創造産業は文化産業に類似しているが、創造経済概念では、創造産業の分類は以下の通りである(UNCTAD[2008] pp.103-105)。
 1.歴史・文化資産(ヘリテージ)系: (1)伝統文化表現、 (2)文化的遺跡・拠点。
 2.アート系: (1)視覚的アート、 (2)舞台芸術、 (3)音楽。
 3.メディア系: (1)出版・印刷物、 (2)オーディオビジュアル、 (3)ニューメディア。
 4.機能的創造物系: (1)デザイン(インテリア、ファッション、玩具、絵画・画像、アクセサリー類)、 (2)創造的サービス 広告、市場調査、公共意見、建築、技術系、リクリエーション的サービス)。
  例えば、ヘリテージ(歴史遺産、文化遺産等)を積極的に活用する産業や機能的工業デザイン製品産業など狭義の文化産業に止まらない産業が含まれている。さらに知識の一部の産業と類型化されるメディア産業も含んでいる。それは、従来の資本と労働力を前提とする伝統的製造業の推進ではなく、個人のアイデアに依存する新しい産業サービスなど「ソフト」なイノベーションを想定している。つまり、生産活動の投入物も産出物も無形であるか、アイデアを重視した有形物である。
 たとえば、デザイン、ファッション関連、メディアのビジネス応用および知的サービス提供などの創作活動や表現活動では、人的開発を期待でき、また女性の仕事を創出する点で、途上国においても新しい種類の雇用機会創造の活動と期待されている。同時に、都市地域の文化的創造性に関する活動では、イベントやフェスティバル(お祭り)などへの市民参加と観光客の訪問が含まれている。同時に、多様な文化的背景を持つマイノリティの参加を通じた社会包摂と仕事の創造という側面が意識されている。

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